商品パッケージのデザインは、感性と分析の両方が求められる。
多くの企業は、同じ製品であっても定期的に商品パッケージを変えます。それによって、売り上げに大きな影響が及ぶことを知っているからです。実際、内容は全く同じでもパッケージデザインを変えただけで、販売数が倍増したという例はいくつも見られます。それだけに、質の高い製品を作るということだけに満足せず、その良さを消費者にアピールするための商品パッケージも重要視することは、企業にとって欠かせないものなのです。
商品パッケージは形状から考える
商品パッケージと一口に言っても、いろいろな要素があります。まず、その形状から考えるべきです。多くの商品では、パッケージは単なる飾りではなく、製品を保護したり消費者が使いやすくしたりするという目的を持っています。たとえば、飲料品であればパッケージをそのまま手に持って飲んだり注いだりしますので、見た目の良さだけでなく持ちやすさや頑丈さを考える必要があります。さらには、製造工程での効率の良さ、店舗での陳列のしやすさという点も考慮に入れるべきです。また、運搬時の破損を防ぐ形状という点も商品の種類によっては検討することになります。このように、形状というのはデザインに大きな影響を与えるものですが、製造や運搬、販売、消費という一連の行動傾向によって制約が出てくることがほとんどです。まずは、効率よく販売まで至る形状を決めることで、商品パッケージの方向性が決まります。もちろん、商品によっては、形状の自由度が高いこともありますので、より柔軟なデザインにすることも可能です。
パッケージデザインの検討段階
形状がある程度見えてきたら、具体的なデザイン制作を行っていくことになります。この際には、商品の特性やターゲットを考えることになります。特に、ターゲット層の分析は売れ行きに直接影響を与えるため、慎重に行うべきです。多くの商品は、パッケージそのままの状態で店舗に陳列されるため、それを手に取ってくれるかどうかはデザイン次第です。それだけに誰に売り込みたいのかを決めた上で、その層にとって注意を引きやすいカラーリングや雰囲気といったものを考えます。
ターゲットの年齢層は、その点で大きな違いを生み出します。たとえば、若い世代は全体的にポップで色数が多い方が目を惹きやすい傾向があります。一方で、上の世代になると落ち着いたカラーリングの方が、安心感を持って手に取るようになります。もちろん、こうした違いは男女の違いもありますので、細かくターゲットを絞り込むことで配色についても絞り込みがしやすくなります。
また、商品の特性や売りも考慮に入れます。この点では、イメージ重視のデザインの方が良いのか、商品のスペックなどが分かる説明を重視したものとするのかといった考え方が重要です。たとえば、同じ食品でも特定の成分が売りのものであれば、その成分や効能をテキストで大きめに書くといった作りになります。一方で、自分へのご褒美やプレゼント用として適したものであれば、説明はほとんどいらず、豪華さやかわいらしさを与えるような雰囲気を盛り上げるデザインを中心とします。何を武器として売るのかということを重視して方向性を決めることで、大まかなデザインが決まるのです。
商品の特性という点では、一般的なイメージも大事にします。たとえば、辛い食べ物であれば、赤などの炎を連想させるようなデザインが使われる傾向があります。他にも、生活家電は白やベージュといったものが多く見られます。こうしたイメージは商品そのものを表しているわけではありませんが、社会的に作り上げられたものなので無視するわけにはいきません。逆に、今までの商品とはまったく違う性能を持っているとか、異なるターゲット層に訴えたいという場合には、こうした一般的なイメージに反するデザインをあえて入れるという手法もあります。刺激的で反応を生みやすいかもしれませんが、成功するか難しいところなので、ちょっとした冒険となることは留意しておきましょう。
どこで売るかということも、商品パッケージとの関連で考えるべき点です。たとえば、同じチョコレート製品であっても、百貨店で売ることを想定しているのであれば、高級感があるデザインにすることが多くなります。一方でスーパーでの販売を考えているのであれば、手に取りやすいものでお得感を与えるようなデザインの方が有利です。
商品パッケージでブランドイメージを
可能であれば、ブランドイメージを固定化できるような商品パッケージにすると、長期的なメリットを生みます。つまり、あるカラーリングやマスコット、形状を見たら消費者が特定の商品を思い浮かべてくれるようになるのが、商品パッケージとしては理想的なのです。より記憶に残りますし、いろいろな異なるシリーズを出してもすぐに認知してくれるようになります。さらに、固定ファンになってくれて、リピーターとして付き合ってくれることも期待できます。商品パッケージを考える時には、このように長い目で見るという点も重視しておきましょう。
ブランディングデザインを意識した商品パッケージを作るべき理由
商品パッケージのデザインは、ブランド価値を高めるために非常に重要な役割を果たしています。パッケージを決める際にブランディングデザインを意識すべき理由としては、まず競争力の強化ができるのが大きいと思います。同じ商品を販売していても、パッケージにおいて競合他社との差別化を図ることで、付加価値を付けられるからです。商品パッケージが魅力的で、視覚的にも訴求力があると、消費者は商品を選ぶ際に、他社の商品よりも優先的に選ぶようになるのです。
また、商品パッケージはブランドのイメージを伝える力を持っています。魅力的で一貫性のあるデザインを採用することで、消費者にブランドの信頼性や高級感などの印象を与えることができます。たとえば、パッケージをブラックやゴールドなどの豪華な雰囲気を与える配色にして統一すれば、高級ブランドだというイメージを与えられます。ポップで明るい色調にして手軽なブランドという雰囲気を持つ他のブランドとは差別化ができるというわけです。
視認性の向上という点も覚えておきましょう。商品パッケージが目を惹くオリジナリティーがあるものだと、ブランドの高級感や存在感が強調され、消費者が探しやすくなります。また、商品パッケージが見やすく、表示されている情報がわかりやすいと、消費者にとって購入するかを判断する際に必要な情報を理解しやすいでしょう。たとえば、食品なら栄養分や原材料、機械ものであればスペックなどです。より早く商品の内容を理解してもらえるようになり、購入を促せます。
商品パッケージに力を入れる目的
そもそも商品パッケージは、商品を傷つけたり破損させたりしないようにする役割を持っています。また、商品の鮮度や品質を保つことができます。こうした本来の目的を高めるためにも、デザインは重要なのです。たとえば、手に取って持ちやすい形状にしたり、内容物を注ぎやすい開け口を設けたりなど、商品の質を保ち使いやすいパッケージにすることで、商品とブランドに対する信頼感や安心感が増すわけです。
消費者に商品の特徴や利点をわかりやすく伝えるためにも、商品パッケージデザインに力を入れるべきだと思います。食品の場合、食材や味付けなどをイメージした画像や色合いをデザインすることで、味を想像しやすくなります。さらに、キャッチコピーや商品名を商品の特徴に合ったものにして、パッケージで強調することで、強みを売り出せます。
商品パッケージは、ブランドのイメージを形成するための重要な要素です。ブランディングデザインを意識して、単にその製品の特徴だけでなく、シリーズや企業としてのブランドをイメージさせる一貫性のあるデザインを採用すれば、ブランドの個性や価値観を消費者に伝えることができます。
一方で、商品パッケージには法律や業界の独自規制に基づいて、商品の情報を記載する必要があります。商品名や説明、使用方法、原材料、栄養成分など、消費者が知りたい情報やルール上必要なデータをわかりやすく記載することが重要です。商品の魅力を伝える部分と、こうした必要データの記載部分との兼ね合いを巧みにデザインすることによって、より惹きつけるパッケージにできます。
ブランディングデザインを意識した商品パッケージで覚えておきたい点
ブランディングに適した商品パッケージを作るために、いくつかのポイントを押さえましょう。第一に、ブランドイメージに合ったデザインを採用することがなにより重要だと考えています。ブランドとして統一したカラーやロゴを決め、一貫性のあるデザインを採用することで、他の製品シリーズと合わせて、消費者にブランドの特徴や価値観を伝えられるからです。
次に、ライバルブランドとの差を作りだし、自社製品を目立たせる工夫をしたいものです。そのためには、競合他社の製品のパッケージをチェックして、同じ列に並んだ時に自社製品が浮き出るようにするのも一つの方法かと思います。一般的なイメージを崩さない程度にオリジナリティーを追求して、自社ならではのアピールの仕方を考えましょう。ここで注意したいのが、商品名や説明、使用方法、原材料、栄養成分などのルール上必要な情報をないがしろにしないことです。マーケティングを追求するあまり、伝えるべきデータの記載欄が見にくくなると、クレームが発生する理由となってしまうからです。
そして、ロゴやカラーといったものだけでなく、商品パッケージ自体の形状や素材を考慮することも大事です。それによって、質感や使いやすさなどが変わってくるからです。形状も含めてのブランディングデザインだという意識で、商品の特徴や魅力を強調しましょう。
商品パッケージに消費者の興味を引くストーリーやコンセプトを盛り込むのも、多くの企業が取り入れて成功している方法だと思います。商品に関するちょっとした豆知識や製造に伴う苦労、商品の開発秘話などを盛り込むことができます。